ソドム百二十日

棚にマルキ・ド・サド著、澁澤龍彦訳の『ソドム百二十日』があったので読んでみた。極悪人名鑑できっと胸くその悪くなるような悪事がつらつらと書いてあるのかな。

で、その凶悪秘事の詳細描写に本編やっと入るのかしらん、という、その前段の登場人物紹介で頁は終わっていた……。えー?! アンチ小説、メタ小説なんですか===<?!

あとがきを見ると、序章のみの全訳、と。個人的には、百二十日間ものデカメロンチックな描写はきっと飽きるだろうから、人物紹介だけで良かったのかも…。18世紀フランス風俗資料、ということで。

ちなみに、若気、玉門、破瓜など、知らない単語が結構出てきたので、いま、wikipediaなど見て調べてみて、ようやっと納得。にやける、男色、若気、と語の意味の変遷って面白いね。

勧善懲悪で終わっている『悲惨物語』の方はちゃんと完結していて、この結末は社会的体裁のためなんだろう、ノリノリに悪事をくりひろげる、けど、小粒に感じるのは家庭劇だからだろうなぁ。

一番文学的価値が低いもの、とあとがきに書かれている『ゾロエと二人の侍女』が一番実は個人的には読みやすかった。というのも、ダイアローグがほかのものより多かったから。ほか2編がやたらと地の文ばかりの描写だらけで、たまに台詞があったとして、性質はモノローグで論文的、生きた会話とは言えないたちのものだったから。で、この小説は、サドの作ではないそうで…(笑