『闇の子供たち』を読んで

目も当てられない。そんな最悪の、劣悪な闇社会。

舞台はタイのバンコク。幼児売春宿の地下牢で鎖につながれ、金持ちの幼児性愛者の外国人たちに性的暴力をうけつづけ、数年でエイズに感染してゴミ処理場に捨てられ、生きたまま腐って死んでいったり、臓器を奪われたり、腸や胃袋に麻薬を詰め込まれて運び屋をやらされたり、難民キャンプで警備員に誘拐されそのまま人身売買されたり、社会の最底辺で生きる親に捨てられたストリートチルドレンや迫害され続ける子供たち。

警察も政治家も軍もマフィアもぐるになった、麻薬と人身売買のルート、幼児性愛者の闇ネットワークなどがタイの裏社会にはある。それらに立ち向かおうとするボランティアスタッフの人たちと臓器移植を取材する日本人ジャーナリストたちの奮闘を描いた小説。

こんな目を覆いたくなることが、もし本当に起きているなら、黙って見過ごせない。小説、フィクションだけど取材もされていて、かつ、TVや雑誌などでもしばしば幼児売春についてのレポは目にしていたけど、惨たらしさ故に、何か自分でもできることはないのか、と思わせてくれた一冊。

猟奇的性愛者や麻薬中毒者、拝金主義者、無知、無関心、貧困、宗教、民族、、複合的な問題で「これ」といった伝家の宝刀的解決策があるわけではない。
だけど、世の中から恐怖や苦しみがなくなって皆が幸せに生きられる社会にしたい、と思う。せめて、基本的人権が守られた社会。

とにかく、パンと水とブランケットだけでなく、貧困をなくし、人が自立・共生していける仕組み・環境と教育が必要。そして負の連鎖を断ち切りたい。まずは、問題意識を持って隣の人と話し始めるのもありだと思う。